抽象とグラデーション——リヒター展を思い出しながら

Tシャツの紹介でも触れましたが、数年前に都内の美術館で、ゲルハルト・リヒターの展覧会を観ました。
抽象画と写真のあいだを行き来するような作品群で、
なかでも、グレーのグラデーションが幾層にも重なる絵が心に残っています。

その少し後に、美大出身の知人が、こんなことを言っていました。
「日本人って、リヒター好きだよね」
その言葉の意味が少しわかる気がしました。

専門外の僕には、絵画の技法や文脈を語ることはできませんが、
曖昧で、どこか静かな画面に惹かれた理由は、なんとなく感じ取ることができました。

原色よりも、濃淡のある色。
服で言えば、一枚で強く主張する服よりも、レイヤードによって生まれる“にじみ”や“揺らぎ”。
素材の質感や色味のグラデーションが、少しずつ印象を変えていくような服。
そんな静かな変化を、僕は選んできたのかもしれません。
そして、日本人の服の好みも、どこかそれに近いように思います。

たとえば、黒いシャツの下に着るインナーの色を、白にするか、
オフホワイトにするか、それともグレーにするか。
一見どうでもいいようで、実はとても大切なことです。
そうした微妙な差に自然と意識が向くのは、“抽象”という感覚が、
僕らの中に静かに染みついているからなのかもしれません。

抽象とは、感じ取る自由が与えられた余白。
その余白をどう着るか。
服を選ぶという行為の中にも、そんな問いが潜んでいる気がしています。

 

Kosoko

 

 


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